アメリカンフットボールの運動能力テストの一つに「40ヤード走」があります。40ヤード(40×0.9144=36.576m)を何秒で走るかで、NFLのトップ選手だと4.1秒位。日本人のトッププレーヤーだと4.5~6秒位でしょうか。100m走で言えば、大体前半の1/3位の距離で、静止した状態からスタートダッシュで加速してトップスピードに到達するくらいの距離だと思います。
アメフトのポジションで、特にWRの場合は10ヤード前後くらいの距離であいてディフェンス(Defensive Back)と競り合いながら、その辺りでボールキャッチしたり、そこから相手をかわしてもっと奧に走り込んでロングパスをキャッチしたりするんですが、瞬発力と直ぐに切り返しできる能力はWRとして必須。「マン・インモーション」という、オフェンスのプレー開始前に一人だけ動くことは許されていますが、その場合でもNFLやUSカレッジの場合は前向きに動くのは反則になるので、基本静止状態からどれだけ早くトップスピードに到達出来、且つそのスピードを出来るだけ落とさずにカットバック出来るかが重要な能力になります。その点、同じように見える陸上競技の短距離選手とは大きく違いますね。唯一、スタートダッシュから出来るだけ短い距離・短い時間でトップスピードに到達する、と言う点は同じだけれど。
で、フットボール好きと思われるこの方が、その40ヤード走と陸上の短距離で、どうも手動計時と電動計時の差について、いろいろ書き込まれている。今は、殆どの競技会で電気計時のはずですが、それに比べて手動計時の場合は、スタート時の計時開始が人間の反射神経の関係で一般的には0.2~0.3秒遅くなります。その為、自分が陸上部の現役の頃は、「手動で11秒0でも、電気なら11秒3と思え」とよく言われたものです。電気計時の場合は、スターターのピストルと連動していて、ピストルが撃たれたら計時スタートとなり、その後ゴール地点で競馬のように選手が通過すると計時を止めて計測します。一方手動計時の場合は、ゴールラインの延長線上に座った計測員は、スターターの撃ったピストルから白煙が出たら計時をスタート(ストップウォッチを押す)し、自分の計測スルーレーンの選手が目の前のゴールラインを通過する瞬間に計時をストップします。実は、ゴールを通過するときは、通過した瞬間にストップウォッチを押すのでは無く、ゴール前本当に少し手前からタイミングを見て、まさにゴールラインを通過するときにストップウォッチが押されるように訓練というか、そう言うタイミングで押しています。ですから、ゴールの瞬間の誤差というのは、手動でも電気でもほぼ無い。一方で、スターと地点から離れた場所に計測員は座っているので、スタートのタイミングを知るのは送れて聞こえる「音」ではなくピストルの「白煙」。光りの速度は、ほぼ瞬時ですが、その光景が目に入り脳が認識して指を動かしてストップウォッチが動き出すまでのタイムラグが0.2~0.3秒と言われているわけです。これも、有る程度練習をして慣れていないと、素人さんがいきなりやってももっとタイムラグは長くなります。
アメフトの40ヤード走は、静止した状態から動き出すと計時が始まり、40ヤード先のゴールを通過すると計時が止まります。スターターのスタート合図に左右されず、自分のタイミングでスタートできるので、陸上のように音を聞いてから反応するよりも早くスタート出来ますし、自分のタイミングでスタート出来る事も大きい。実は、有る程度スターターの癖というかタイミングを計って、実際にはピストルが動く前に動作をするような選手も居るんですが、最近ではスタート時に足を置くスターティングブロックにセンサーが付いていて、ピストルが鳴ってから一定時間以内(大体0.1~0.2秒)にそのブロックに圧力が掛かると「フライング」と判定されたりします。だから、それだけで陸上の場合100m走を40ヤード地点で切り出したとしても、コンマ数秒は遅くなる事に。それに、陸上のスターティングブロックの有無や、40ヤードと100mの距離の違いによる走り方の違いなど、一見似たような感じだけれど、競技としてみると「かなり違うもの」というのが私の感想。少なくとも計時についても、手動の時の走り出しの所をどうゆう風にするかで、電気計時と比べてコンマ何秒の違いは生まれてくるだろうし、「手動計時は電気計時よりも、コンマ何秒良い値が出る」と言う事以外、「その誤差が〇〇」という話をしても余り意味がない気がします。まぁ、本番は電気計時だから、練習もそれでやるべきというのは正解だとは思うけれど、でもどちらで計測されるとしても、スタートから一気に加速してトップスピードに数歩で到達して、そのまま残り30何ヤード走りきれる能力を付ける、と言う事に変わりは無いわけで、計時の違いよりもそこが重要だと思う。
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