プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手が、全仏大会での記者会見を拒否し、さらには自分が悩んでいるうつ病を告白して大会を棄権することに。その様子を伝える報道を見ていて驚いたというか、ちょっと怒りみたいなものを感じたのが、彼女が大会を棄権する理由となったうつ病の原因を、試合で勝っていくことのプレッシャーみたいな伝え方をしていたこと。全ての報道を見ているわけじゃ無いけれど、今朝のニュース等みてもそう言う論調は変わっていないので、多分どのメディアもそう言う伝え方をしているんだろうけど、いゃいゃ、彼女のうつ病の原因の大半は、彼らメディアの心ない報道、無責任な報道、無作法な取材活動でしょう。
こちらの記事ではイタリアメディアのコメントが掲載されているんですが、
「我々ジャーナリストが完璧でないというのはOKだ。だが、精神科に行くような質問を聞いたことなどない」
と言う、特に最後の一文は、虐め問題でいじめていた側が言う台詞のように聞こえます。勿論、彼女のここまでの行動や発言には疑問を感じる部分もあるし、それならもっと早くという意見ももっともだと思います。ただ、プロ選手として「勝つ事が仕事」である以上、試合前に不利な情報は出したくないと思うことは当然。自分で、あるいは自分のチームで解決して行かなきゃいけない問題を、あえて外に出す理由は無いけれど、それがもうどうにも抑えられない状態になったから、今回そう言う発言と行動に繋がったんでしょうね。まぁ、その辺りの状況は本人にしか分からないことだから、あくまで推測の域を出ないけれど、そう言うスポーツに関してのプレッシャーならまだしも、それ以外の全ての事象を彼女に対して突きつけてきたメディアの責任というものは、もっと今回取り上げられるべきだと思う。
例えば、彼女がBLMに関して自分の意見を言うことは、国籍は日本であっても実際に生活しているアメリカの話だから当然だと思う半面、日本国内での話を振られても困るわけです。同様に、オリンピックの話であるとか、日本国内の話を彼女にコメントを求めても、身近で無い話に意見も言えないだろうし、その会見の場自体はテニスの話をする場であろうから、そこに場違いの話を持ってくることが先ず間違い。さらに、彼女の発言が大きく日本国内で取り上げられて、それに対しての反応は直接彼女に届くわけです。ポジティブなものも有れば、ネガティブなものもあり、さらに知名度では世界トップクラスであるが故に、その分量は想像以上のものでしょう。そう言う事を何度も突きつけてきたメディア、特に日本のメディアの無頓着さというものが、彼女の精神への最大の問題点だったと私は思う。
そう言う事を少しでも認識していれば、一言くらいは「我々メディアも対応を反省する必要が有る」くらいの事は言うべきだと思うのに、少なくとも自分が見聞きしたここ数日の反応では、そう言うものは無かったし、メディアからの言及も無い。それって、最初に書いた「虐め問題」の報道にも見えるもので、いつも有耶無耶というか曖昧なまま、何となく記憶から消えて終わりになってしまう。「プロ選手だから、会見を受けるのも仕事の一部」という意見には、なるほどと納得する半面、プロフェッショナルに対してはそれなりの敬意を持って対応するのも礼儀だと思うんですよね。それに値する対応(=取材)をしているのか、その点に関してはまずはメディアが真摯に反省するべきだと思うけれど、多分そんなことは今回もこれからも無いでしょうね。
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