衰退する日本のオーディオ環境

日本のAV(Audio-Visual)トップメーカーの一つだったオンキヨー(ONKYO)が、そのホームAV事業譲渡をするという記事。私もオーディオ好きの大叔父の影響もあり、中学生くらいから嵌まりだして、ピークは30代かなぁ。30代後半に、それまでのアパートから分不相応のマンションに引っ越して、1部屋を5.1chサラウンドルーム・シアタールームにして暫く楽しんだのが、40代だったかなぁ。丁度LD(Laser Disk)が登場したころで、コンテンツを買い漁りましたが、あの頃が最後だったなぁ。

記事では、そのオンキヨーだけで無く日本のオーディオ環境の変化も語られているんですが、今にして思うとSONYのWALKMANが登場して、「個人が一人で聞く音楽」というものが誕生した事が大きな転換点だったように感じます。それまでは、「音楽を聴く」というのはごく一部の用途を除けば、スピーカーで出来るだけ大音量で聴くというのが理想だったわけです。その為には、アンプやプレーヤー、スピーカーにスピーカー線、さらには電源に部屋の造りと、こり始めると切りが無いくらいの「沼」に嵌まっていったわけです。今でもそう言うオーディオ好きの方も多いと思うけれど、WALKMAN誕生によって、もっとカジュアルにもっと気楽に音楽を聴くという習慣が生まれたことは大きいのでは。

同様の事例として、それまでもラジオを利用すれば同じような事は可能だったわけです。でも、ラジオの場合は、当時はAM放送が主流で音質的に不満が残る。FM放送が始まると、その高音質が人気で音楽放送中心だったこともあり人気になるんですが、そうなると今度は自分の好みの音楽を集中して聴きたいという不満も。当時生まれた貸しレコード屋(黎紅堂とか)もあって、自分で好みの曲を集めたカセットテープを作って視聴することが可能になり、その用途にはWALKMANの様な携帯プレーヤーがピッタリ。しかも、WALKMANの音質特にイヤータイプのヘッドホンの音質と軽快性がそれまでに無かったものだけに、あれだけのヒット商品というか一つのライフスタイルを創造するまでになったんだと思うんですよね。

今でも日本だけは特異的に音楽CDの売上げが結構有るらしいのですが、シリコンオーディオへの移行が遅れたのはそういう事情が大きかったのかも。日本人特有の「所有欲」というか、何か形で残したいみたいな気持ちが、強いんじゃないだろうか。それでも、最近の若い世代ではそう言う所有欲的なものが希薄化しているらしいから、段々とその状況も変わっていき、世界的なシリコンオーディオ中心の世界にシフトしていくんだろうけど。今だと、人の声以外の音楽パートなどは、殆どデジタル音源で構成可能だろうから、最後の人の耳に伝える部分以外波全てデジタル処理で作られた音楽が普通になっていくんだろうか。歌の部分だって、初音ミクとかを利用したら、フルデジタル化する事も可能だろうし。アナログ信号を扱ってきた旧来のオーディオ製品が、デジタル化の波に乗り遅れた事が今回の理由の一つなんだろうけど、それってこれまでも日本の産業が犯してきた事をそのままなぞっている気がしますね。もう何かブレークスルーを考えないと、日本の産業全体の問題になりそう。

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