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旭川医科大学での学長解任に関して、取材として校内に入っていた北海道新聞の女性記者が、建造物侵入容疑で逮捕された記事。この行為も問題だと思うけれど、もっと根が深いのは同業者からの擁護の声。「取材」の名目であれば、ルールを破っても良い、何故なら「取材」は公益性のある行為だから、という理由らしい。

同じロジックは、以前からマスコミやメディアが使うものだけれど、禁止されている場所に許諾も得ずに侵入してかつ何らかの行為を行うことが、何処まで許されるのか、それは厳格に判断されるべきでは。例えば、人の命が掛かっている場合に、取材のために進入禁止の場所へ入り、その内情を伝える事は許されるだろう。でも、今回の様に会見設定がされているにもかかわらず、一刻も早くスクープを取りたいが為に不法に敷地に侵入したり建物に入ることは、「公益性」に該当するとは思えない。それが許されるのであれば、自分達が同様の名目で外部から自社ビル内に記者が入る事も許さないといけなくなるのだけれど、それをこの北海道新聞や擁護している他社メディアは許すのだろうか。自分達の活動に公益性があるというのであれば、その活動を監視し必要なら是正する行為にも「公益性」が認められるはずですよね。

多分、大学の構内・敷地内に入ることは多くの場合自由が認められていると思いますが、その中の建物に入る場合は殆どの場合「部外者入館禁止」みたいな状態じゃないだろうか。図書館とか某かのサービス施設なら、校外からの利用者も想定しているだろうけど、授業とか大学業務が行われる建物に関しては、普通は関係者以外立ち入り禁止のはず。記事を見ると、建物への不法侵入の疑いで逮捕されたというので、疑問なのは警察を呼んで逮捕するまでの何かあったのかということ。例えば、再三注意したにもかかわらず無断侵入したとかであれば、それは記者側の行為が問題だろうし、いきなり問答無用で逮捕と言う事になると、学校側の対応に関しても詳しい説明が必要かもしれない。で、それ以上に問題だと思うのは、マスコミ関係者が自分達の「公益性」を理由に、ルールを曲解あるいは無視する事も正当化されると考えていることでしょうね。

朝日新聞記者のtweetで、「夜回りもストーカー規制法違反と言われかねない」と、今回の対応を批判しているけれど、それも程度問題でしょう。政治家の疑惑のために夜討ち朝駆けする事は「取材活動」だと思うけれど、芸能人の不倫疑惑のために毎日マンション前に張り込んだりすることは「取材」と言うよりは「ストーキング」だと思う。さらに言えば、最近ではその「取材活動」の閾値がどんどん上がってきていると思うんですよね。その最大の理由は、仮に正当な取材行為であっても、実際に記事として公開されるときにはその中から適当な語句や文章を切り貼りして、酷い場合には180度意味が異なる内容にされることが批判されるようになったから。つまり、取材方法の善し悪しでは無く、取材後の編集方針に関して疑問が呈される世の中なのに、「取材の公益性」と言う言い訳をしても通らないと思う。メディアは、自分達の存在意義が問われていることを、もっと真剣に考えた方が良いと思う。

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