NHKのニュース記事から、トヨタ自動車のお膝元の愛知県豊田市が「トヨタ生産方式」を取り入れた大規模接種会場を開設して、ワクチン接種の効率化を図っていると言う話。まぁ、私の世代なんかは、会社に入って「改善活動」とか「TQC (Total Quality Control)」とか社内教育で叩き込まれた時代で、その時に必ず登場するのがトヨタの「カンバン方式」でした。そこからさらに色々と改善策とかアイデアが蓄積されている今の「トヨタ生産方式」何だろうけど、考えてみたらトヨタくらい規模の製造業で、かつ国内に何カ所も製造工場を持っているからこそ、そう言う改善策が今でも継続しているし、今回の様に横展開も直ぐにできるんだろうなと言う事。
バブル崩壊後、製造業の殆どは割安な労働力を求めて、海外(実際には中国)へ進出して、国内工場を現地の工場へ移管したり、さらにはその工場すら持たないOEM(Original Equipment Manufacturer)/ODM(Original Design Manufacturer)やEMS(Electronics Manufacturing Service)にシフトしていき、どんどん製品開発の効率化、低コスト化に邁進して行きました。結果的に、それが国内産業の基礎体力を奪うことになり、家電製品がその代表例だけれど、国内での製品開発は残るけれど、製品製造は事実上無くなったような物。その結果、例えば品質管理(Quality Control)で問題が出たり、製品管理(Product Control)の経験が薄くなり苦労することも増えてきたと思います。うちの会社も、自分が入った頃は極端な話「上から下まで全て自社製造」みたいな所があったんですが、バブル崩壊やその後の経済の急変からコストダウンが至上命題となり、OEM/ODM活用が必須と言われて、どんどん外注するような状況に。それでも、色々な理由から細々ながらも自社製造ラインを何とか死守して、結果的にそれが技術継承みたいな事に繋がり、後からそれが核技術みたいな事にまで成長して復活する位にまでなりました。まぁ、たまたま運が良かっただけなのかもしれないけれど、一度手放した技術は戻らないと言うことを、自分自身経験して実感する貴重な歴史です。
で、そう言うKnow-Howが手元に有るからこそ、こう言う緊急の場合にそれを水平展開するだけの能力と技術と蓄積があるわけで、特に自動車産業のように工程作業の典型みたいな技術と蓄積は、今回のワクチン接種みたいな作業フローへ応用するには最適かも。車で無くても、色々商品を国内製造している企業は幾らであると思うのですが、例えばそれが分業化されすぎていて別々の場所でパーツ製造されて、最後に組み立てるだけみたいな場合だと、ちょっと今回みたいな展開には向かないと思う。また、自動車製造の場合、一つのラインに自動車のフレームが流れていてきて、それを人手で順番に組み立てていくと思いますが、それが余りに機械化されすぎてしまうと、逆に応用しづらいという事も有るでしょうね。人手が多く関わるから、細かな融通も利くし、自由度も高くなるわけだし。そう言う意味では、トヨタ以外の産業で今回の様な応用が可能な業種を考えてみたら、例えば食品加工なんかは有る程度人手と機械化が混在して、流れ作業で製品が製造されていくから、案外上手く行くアイデアが見つかるかもしれない。
「製造」から離れて、例えばオークションサイトの運営会社だったら、市中の診療所と予約待機者のマッチングアプリみたいな物を作れば、より効率的に接種が進むかもしれない。その場合、1回目と2回目の接種が異なる病院・医院でも可能で、かつ間隔が4週間だけれど多少の余裕も持たせられるとなれば、利用者の利便性も上がるから接種率も上がるだろうし。特に、注射を打つ側の病院・医院側も、例えば一日の内「何時から何時まで」みたいな対応だって可能になるかもしれない。ワクチンの廃棄ロスを無くすための、キャンセル待ちマッチングアプリなんて、かなり需用が有るんじゃ無いだろうか。重要な事は、こう言う知見や経験を一過性のものとして終わるのでは無く、次に繋げるものとして残して行くことですよね。ワクチン接種だって、今回一回で終わるとはまだ誰も確証出来ない訳ですし。最悪変異株によっては、来年位はもう一度全国民的なワクチン接種が必要になるかもしれない。その為にも、自治体情報共有サイトとか、こう言う取組の記録は、今後も継続して活用して更新することを忘れないようにしないと。日本人の悪いところは、何かあると火事場の馬鹿力的に何とか解決する能力の高さもあるけれど、それが終わると結構忘れてしまい、後からまたアタフタすることが多いこと。「のど元過ぎれば」とならないようにしないと。
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