東京五輪の開催による新型コロナウイルスの感染拡大への影響について、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループが行ったシミュレーションがここの所取り上げられているんですが、どうも疑問点が幾つか。元のリリースなりデータを探しているんですが、それ自体は公開されていないのか、「人流が0%ならほぼ変換し、+2%なら1044人、+6%なら1601人」と言うような、予測値の話だけがニュース等で取り上げられています。
シミュレーションのデータが、5月16日迄のデータに基づいているので、それから2週間程経過した今での判断とは異なるの部分もあると思うのですが、個人的に素朴な疑問として感じるのは、「五輪開催しない場合でも、7月下旬くらいから徐々に感染者数が増加してきて、10月中旬くらいにピークを迎える」というシミュレーション結果。この「五輪以外の増加要因」とは何なんだろうか。ぱっと思いつくのは、夏休みと言うことなのかなと言うこと。でも、昨年と同様に感染状況によっては夏の帰省を今年も止める人も多いだろうし、その辺りのパラメーター設定をどうしているのか気になります。もう一つ気になるのが「人流〇〇%」と言っているのですが、その基本料となるのは何時のどれだけのデータなのかということ。データを扱うときに悩むのは、絶対値で表記した方が良い場合や割合で表記した方が良い場合、それぞれあって、それが逆になると意味不明なデータになってしまう場合も有ること。今回の場合も、このシミュレーションが発表された5月上旬の人流数に対しての増減なのか、7月中旬くらいの予測値なのか、先ずそれが不明。それが分からないと「+〇〇%」と言ってもどの程度の増加量なのか判断出来ない。
例えば、「都内主要繁華街における滞留人口モニタリング」というデータを公開しているサイトがあり、主要繁華街のデータが公開されていますが、夜間で7%、昼間で9%増加していると書かれています。また、それらの滞留人口を合計すると、数百万人規模になるわけで、その1%当たり数万人の増加と推測できます。ただ、それがどの時点での増加なのか、毎日1%ずつ増加した場合なのか、その当たりも一寸分からない。滞留人口の推移を見ると、4月25日から大きく減少して、G.W.明け位から再び上昇しています。ところが東京都の各データを見ると、陽性者数は5月13日頃をピークに下がっていて、実効再生産数もやはり13日をピークに胃のところ減少傾向となっています。実際の影響が出るのは+10~14日(2週間)後と言う事を想定すると、5月のG.W.明け以降の影響は、もう先週くらいから表れていても良い頃ですが、その頃は感染状況は落ち着いて来ています。この傾向がこのまま続くかどうかは不明だけれど、何となく状況のターニングポイントなる時期が5月の中旬くらいに発生したように感じられて、だからその少し前のデータでシミュレーションした結果を、最新のデータで再計算しないと、今後の予測値と実際の値の乖離が、どんどん広がるような印象を私は持っています。あと、同じくシミュレーション結果を報じる朝日新聞のこちらの記事では、1年後までの予測値を掲載していますが、どの場合でも年明けくらいには感染も落ち着き、3月位には終息する予測になっています。ちょっと乱暴な言い方をすると「五輪をやってもやらなくても、終わりは一緒」。となると、気になるのは人流増加によるピークマネージメントが可能かどうかで、予測値では1600人/日が10月上旬頃に来るとなっていますが、東京都の場合昨年末頃から1月の終わり頃位まで、ほぼ毎日1500名を超える状態が続き、ピーク時では1月7日から9日の3日間は2500名位が新規感染者として登録されていた時期。だから、別の言い方をすれば「+6&人流が増えても、あの時よりははるかにましな状態」とも言えるんですよね。さらに言えば、ワクチン接種者数はシミュレーションの仮定値である50万人/日を既に超えて60万人/日になっており、目標の100万人/日も6月中には達成可能と見えます。そうなれば、ピーク発生の時期は変わらないとしても、その高さ(=新規感染者数)はもっと押さえられるはずで、そういう部分も加味しつつ、想定して行く必要があると思います。私は五輪開催賛成派で、出来るだけ有観客で開催するべきだと思っているけれど、その判断は慎重にするべきだとも思います。ただ、その為の材料として、古いデータに基づくのでは無く、最新のデータで判断して欲しいし、どちらかというと多くの開催反対の意見を言っている人達のように、感情的な理由や動機で単に「反対」と言う事だけは止めて欲しいと思いますね。
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